在職中の体調不良により傷病手当金を貰っているけど
復帰のめどは立たないし、いつまでも会社に在籍しているのも居心地が悪い。
今会社を辞めれば傷病手当金を貰いながら失業保険も貰えるのでは?
そう思ったとしたらちょっと待った!
傷病手当金も失業保険もどちらも「働きたいのに働けない」時に貰うものですが、
健康状態が悪くなったタイミングや
健康状態に問題があり、すぐに仕事に就けない場合によって
貰えるものと貰えないものがあるんです。
退職後に体調がすっかり回復しハローワークで失業保険の手続きをしたものの、
怪我により再び長期療養が必要になってしまったら・・・。
健康保険の傷病手当金と失業保険や傷病手当ってどっちがお得なのでしょうか?
それって両方同時に貰う方法はあるの?
健康保険の傷病手当金の申請はいつまでにしなければいけないのかについてお話します。
健康保険の傷病手当金と失業保険の基本手当や傷病手当はどっちがお得?
まず、失業保険の「傷病手当」と「基本手当」はどっちがお得かというと、答えは
どっちも同じ
ですが「健康保険の傷病手当金」と「失業保険の基本手当や傷病手当」はどっちがお得かというと、答えは
ケースバイケース
です。
まずハローワークに失業保険の手続きをした後、病気や怪我により15日以上働くことができない状態になった際、
基本手当と同額の傷病手当の支給を受けることができます。
(ただし、健康保険、労災保険等、他の法律に基づいて傷病手当金、休業補償給付等の支給を受けている場合や待期期間中、給付制限期間中の日においては支給をうけることはできません)
ですが引き続き30日以上働くことができない場合には、
・傷病手当の支給を受け続ける
または
・傷病手当の支給を受けるのをやめて受給期間を延長し、
病気や怪我から回復し次第、再び基本手当の支給を受けるようにする(受給期間延長)
のどちらかを選択することになります。
では次に、健康保険の傷病手当金と失業保険の基本手当を比較してみます。
傷病手当金の支給日額の算出方法は、
支給開始日前の過去12か月の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 2/3
という計算式で割り出します。
一方、失業保険の基本手当の日額の算出方法は、
離職される直前の6か月間に支払われた賃金の合計金額÷180日×給付率(45%~80%)※上限あり
という計算式で割り出します。
(給付率については年齢や賃金日額により変化するのでこれもケースバイケースです。)
ではそれぞれの支給日額を「平均手取り20万円、額面25万円の場合、」の例で考えてみましょう。
傷病手当 = 25万 ÷ 30日 × 2/3 = 5,555円(日額)
失業保険 = 25万 × 6か月 ÷ 180日 × 45%~80%= 3,750~6,667円
(今回の例では当てはまりませんでしたが、失業保険の基本手当日額には「上限額」がある場合もあります。)
一見場合によっては失業保険のほうが多く貰えるように思えますが、
失業保険は勤続年数がどんなに長くても、もらえる期間は原則1年間。
一方傷病手当が給付される期間は最長1年6か月です。
失業保険を日額6,667円で1年貰うと総額は 2,433,455円
傷病手当を日額5,555円で1年6か月貰うと総額は 3,038,585円
となります。
が、
これは本当に「単純計算」であり、
傷病手当の計算式に使われる標準報酬月額はもっと具体的な計算によって出された数字がもとになります。
受給期間内に受けなかった失業保険は「残日数」として残りますが、
(失業保険の基本手当の受給期間は原則として離職日の翌日から1年間(ただし所定給付日数が330日ある場合は1年間+30日、
所定給付日数が360日の場合は1年間+60日))
傷病手当の「1年6か月」という所定給付期間は暦通りのため土日祝が含まれたり、
または期間内に復職し、途中傷病手当を受給していない期間があり、貰える予定の全額が支給されていなかったとしても、
受給開始日から1年6か月後に受給期間は終了してしまいます。
なのでどちらがお得かというのはそれぞれの状況により変わるため一概に判断することはできません。
ちなみに健康保険の傷病手当金の給付に必要な条件として、
・療養のための労務不能であること
・4日以上仕事を休んでいること
・給与の支払いがないこと(ただし給与が一部だけ支給されている場合は傷病手当金から給与支給分を減額して支給される)
とあるのですが、もう一つ大切な条件があります。それは
健康保険に加入している状態であること(任意継続含む)
です。
体調不良による離職後、健康保険の任意継続をせず、
国民健康保険に加入してしまうと対象外となってしまいますのでご注意を。
傷病手当(雇用保険)と傷病手当金(健康保険)は違う!
ここで勘違いや混同を招く「雇用保険の傷病手当」と「健康保険の傷病手当金」の違いについてご説明します。
雇用保険の傷病手当とは
退職後ハローワークへ行き、失業保険の申し込みをした後で、
病気や怪我のために就職出来ない日が継続して15日以上になった場合に支給される手当のことです。
ポイントは「失業保険の申し込みを行った後の病気や怪我」が対象のため、
退職はしたけどまだハローワークに手続きに行っていないという場合に病気や怪我をしても、傷病手当は支給されません。
健康保険の傷病手当金とは
在職期間中に、仕事とは関係のない病気や怪我が原因で働くことが出来ない日が
4日以上続いた場合に給与の約3分の2ほど支給される手当のことです。
申請から1年6か月が受給期間となりますが、その間に有給休暇を取得したり、
一時的に復職し、その間給与が発生した場合には支給額よりその分が差し引かれ、残りの支給額が支給されます。
非常にわかりにくいのですが「傷病手当」と「傷病手当金」は違うものなので覚えておきましょう。
健康保険の傷病手当金と失業保険の基本手当や傷病手当は両方同時に貰えるの?
健康保険の傷病手当金と失業保険の基本手当または傷病手当は両方同時に貰えるのかについてですが、
傷病手当金の受給資格は「働けない状態である」というのが前提です。
健康保険は、在職中から傷病手当金の申請・支給を受けている場合には、退職後も継続して申請することが出来ますが、
退職後、新たに申請することはできません。そして、
雇用保険(基本手当または傷病手当)と同時に貰うことはできない決まりになっています。
そして雇用保険の傷病手当の給付を受ける条件もまた「失業保険の受給資格決定後の病気や怪我」が対象のため、
健康保険の傷病手当金と失業保険の傷病手当を両方同時に貰うことはできません。
ですがこれはあくまで両方「同時」には貰えない
ということ。
傷病手当金の支給を受けている途中で会社を退職した場合、
手続きとしては退職後30日を過ぎてから1か月以内に
雇用保険者証と離職票を持ってハローワークへ行き「受給期間の延長」を申し出ます(働くことができないという医師の証明等持参)。
この手続きに関しては代理人による書類の提出や郵送による提出が認められています。
そうすることで雇用保険の「原則、離職日の翌日から1年間」という基本手当の受給期間を
最大プラス3年(原則の1年と併せて計4年)に延長することが可能になります。
傷病手当金の申請をしてから1年6か月の範囲内で傷病手当金を貰った後に、
再びハローワークへ行き(働ける状態にあるという医師の証明等持参)。
手続き後、基本手当が認められれば結果として健康保険の傷病手当金と失業保険の基本手当を
両方貰える
ということになります。
傷病手当金の申請はいつまでにすればいい?
傷病手当の給付を受けるためには、まず3日以上連続して休職することで
初めて傷病手当の申請ができることになります。
休職した3日間は「待期期間」といって傷病手当の給付は受けられず、
次の4日目から傷病手当の給付が開始されることになります。
4日以上会社を休んで初めて傷病手当の申請ができることになるのですが、
申請はいつまでにすればよいかと言いますと・・・。
これには特に「いつまで」という期限はないものの、
遅れればその分給付が遅くなるので、なるべく早く手続きすることをおすすめします。
傷病手当を受給するには、
具体的には健保やインターネットから申請書の用紙を取り寄せ、
傷病手当金を申請する人は「健康保険傷病手当金支給申請書(被保険者記入用)2枚」に必要事項を記入します。
会社に「健康保険傷病手当金支給申請書(事業主記入用)」を記入してもらいます。
(ただし退職後に申請する場合は不要)
次に医師に「健康保険傷病手当金支給申請書(医療担当者記入用)」を記入してもらう必要があるのですが、
診察中にお願いしても時間がかかるため、お願いしておいて後日改めて取りに伺うことになるかもしれません。
そうなるとそこですでに数日間を消費してしまいます。
そして在職中の場合、会社が記入する申請書には給与の締め日~締め日の出勤状況を記入しなければならないため
どんなに早く会社に書類を提出したとしても
タイミングによっては給与の締め日まで待ってから申請することになります。
それらが全て揃い協会けんぽに申請後、振込完了の通知が約2~3週間程度で届きます。
ただし在職中は、傷病休暇中で給料が0円であっても
会社には健康保険料や厚生年金や住民税の負担が生じているため、
本人負担分に関しては会社に清算する必要があります。
その辺のことはあらかじめ会社に「毎月支払うor復職後にまとめて支払う」など
どうするかを会社と相談するようにしましょう。
まとめ
「傷病手当」は失業保険のうちの一つで「基本手当」とどっちも同じ額
健康保険の傷病手当金と失業保険の傷病手当は「両方は貰えない」
健康保険の傷病手当金と失業保険の基本手当なら「同時にはもらえないが最終的には両方貰える」
健康保険の傷病手当金の申請にはいつまでという期限はないが、
早くすることでその分早く傷病手当金が振り込まれることになる。
傷病手当金も失業手当も傷病手当も、
働きたいのに働けない状態にある人が活用するというところでは同じですが、
病気や怪我の発症がいつなのかや、健康状態によってどれに当てはまるかが分かれます。
健康保険の傷病手当金の給付を受けているのであればそれを優先し、
回復し次第基本手当の給付を受けるようにしましょう。
ですが退職後にはなるべく早くハローワークへ行きましょうね!